March 16, 2007

 研究者に愛されたプレイメイト

画像処理の研究において広く使用されている標準テスト画像の中に「Lena(レナ)」と呼ばれる写真があります。

これは南カリフォルニア大学の信号画像処理研究所(SIPI)において、従来のテスト画像よりもダイナミックレンジの広いサンプルを探していたところ、偶然手元にあった「PLAYBOY」誌のグラビアをスキャンして用いたことに由来します。モデルはレナ・ソジョーブロム(Lena Soderberg)というスウェーデン人女性。1972年11月のセンターグラビアを飾ったプレイメイトでした。必要なサイズを切り出したところ、ちょうど肩から上のアップになったようです(掲載グラビアは全身ヌード)。その後、この事実を知った「PLAYBOY」誌の発行元は、無断使用について裁判も辞さないと警告したそうですが、画像の使用目的を考慮し強硬な姿勢を取らなくなったそうです。ちなみに、「Lena」が掲載された1972年11月号は7,161,561部も販売され、「PLAYBOY」誌の最多販売部数として記録されています。

単なる偶然から、研究者にお馴染みの標準画像となった「Lena」ですが、いかに愛すべき存在であったかは、1997年に画像処理研究の学会(Society for Imaging Science in Technology)の50周年記念会議にレナ・ソジョーブロムさんが招待されたということからも明かです。あれから随分とお歳は召された感じですが(失礼)、その笑顔からは当時の面影をうかがうことが出来ます。会場ではサインを求められたり、写真のポーズをたのまれたりと、熱狂的に迎えられたそうです。それに対して「They must be so tired of me ... looking at the same picture for all these years (皆さんは、もう私にうんざりじゃないかしら… 長い間ずっと同じ写真ばかり見てるから)」とコメントを残しています。なお現在は、ストックホルム近郊に在住し3人のお子さんに恵まれ、政府関係の仕事をしているとのことです。

身の回りのデジカメをはじめとする画像関連のテクノロジーは、彼女の写真とにらめっこを続けながら開発に励んだ研究者によって生み出されたのかもしれません。そう考えると、「発明の母」とは彼女のことを言うのかも知れません。

投稿者 bitterbit : March 16, 2007 07:58 PM